●情報BOX登録No.9702B102

   タイトル: 人事・労務問題相談室
   
労基旬報第1018号(平成9年2月15日)より


日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。


接待に時間外手当の支払いが必要か?
営業マンが終業後に得意先を接待することがあり、従来飲食費を支給することで済ましてきましたが、取引の円滑化に役立つのだから労働時間として時間外手当を支給すべきとだ主張する者がいます。接待も労働時間扱いしなければならないのでしょうか。(東京・K建設)


労働時間は原則として使用者の指揮監督の下にある時間のことですが、最近では接待などの終業後の活動の労働時間制の判断は、業務性(仕事としての性格が強いかどうか)も基準に加えて判断すべきだとの考え方が有力になっています。
たとえば、高崎労基署長事件前橋地裁判決(昭50・6・24)では終業時間後の活動が労働時間と認められるには@使用者の積極的特命A業務の緊要性、の二要件の充足が必要との趣旨の判断がなされています。
ご質問のケースは、接待についての使用者の積極的特命があったとは見られないこと、および業務性が強度とはいえないことなどから労働時間とはいえないと思われます。ただし、飲食時間と交渉時間が明確に分離できる場合の交渉時間は労働時間となりますが、接待先に直行する場合などは「労働時間を算定し難い事業場外労働」として所定労働時間働いたものとみなされます。



移籍者の未消化年休の処理について
関連企業に移籍させる労働者の年休が未消化のままかなり残っています。どのように取り扱ったらよいのでしょうか。(宮城・T製作所)


労働者の企業間移動での年休(年次有給休暇)の取り扱いについては、「在籍出向」では継続勤務の取り扱いとなりますが、移籍の場合は勤務の継続性がなくなると考えるのが妥当でしょう。そこで、ご質問のように未消化年休の処理が実務上の課題となるわけです。
ところで、年休は労働日の存在を前提とするものですから、貴社との労働契約が解消されるまでに取得しなかった分については消滅してしまいます。これは会社都合による移籍の場合でも変わりありませんから、移籍するまでに取得しなかった年休を買い上げる必要はないと原則的にはいうことができます。
しかしながら、移籍の内示からその実施までの期間が短く、その間の業務の状況から年休取得が困難な場合にまでこの原則を適用することは信義則上適切でないと思われます。この場合は、使用者が年休消化の困難な状況をつくっておいて、その結果を労働者に負わせることになるからです。したがって、急な移籍で自発的な年休取得が困難であったと見られる場合は、買い上げるのが妥当だと思われます。予めの年休買い上げは違法ですが、結果として残った年休を買い上げるのは差し支えありません。
いうまでありませんが、内示から移籍まで相当期間があり、年休取得が可能だったのに消化しなかった場合は消滅扱いで差し支えありません。



子会社と半々で就労する労働者、どちらの労災保険を適用?
子会社の要請を受けて労働者を一定期間派遣することになりました。その間子会社の仕事が暇な時は当社でも就労します。だいたい半々ぐらいの就労になる見込みですが、事故に遭った場合はどちらの労災保険が適用されるのでしょうか。(静岡・F開発)


労災保険は、実際の業務で労働者を指揮命令する使用者の労災補償責任を担保する制度です。この観点から出向の場合は指揮命令権のある出向先の労災保険だけが適用になります。
しかし、ご質問の場合は、子会社と貴社へ半々ぐらいで労務を提供するとのことですから、出向と位置づけるのは無理だと思われます。
こうした場合は、2以上の適用事業主に雇用される場合に準じて、派遣期間中は貴社と子会社の両方に雇用されるものとして、子会社での就労中に事故に遭った場合は、子会社の労災保険が適用されると、解釈する以外にないと思われます。
保険料や賃金日額の算定など難しい問題がありますが、いずれにせよ、派遣される労働者が労災保険の保護を受けられないことはありません。





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