●情報BOX登録No.9701B101

   タイトル: 人事・労務問題相談室
   
労基旬報第1015号(平成9年1月15日)より


日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。


能力の劣る長勤続者、賃金の切り下げ可能か?
 長期勤続のため賃金が目立って高いいのに客観的に見て若手社員より能力の劣る労働者の賃金を切り下げたいのですが、法的に許されないのでしょうか。(長野・T建材)


賃金の額は本来使用者と労働者の合意で決められるべきものですから、最低賃金法などの強行規定に反しない限り、労働者の同意を得ての切り下げは違法ではありません。
 しかし、就業規則の一部である賃金表で額が決められている場合(たとえば、何等級は××万円など)は、その賃金表の賃金を減額改定しない限り、たとえ労働者の同意があっても切り下げの効力は生じません。賃金表の改定について不同意な労働者が出た場合は、不利益変更就業規則の拘束力の問題として争われますが、裁判所は「高度の必要性」がない場合は拘束力を認めないのがこれまでの取り扱いです。
 しかし、賃金表がない場合(いわゆるどんぶり勘定で決めている場合)は就業規則の変更の問題にはなりませんから、個別的労働条件の変更として同意があるか、変更に合理性が認められれば賃金の切り下げも効力を生じます。しかし、能力判定が難しいことを勘案すれば、極端な切り下げは避け、中長期的に能力主義賃金化を図るのが妥当でしょう。



36協定の自動更新制度とは?
時間外労働(三六)協定を自動更新とする方法があると聞きましたが、どのように定めればよいのでしょうか。また、その効果についても教えてください。(東京・Y保険)


時間外や休日の労働を適法化する三六協定は、労働者代表(過半数労組)と締結し、労基署に届け出ることにより効力を生じますが、有効期間を定めなければならないことになっているため、原則的には期間が満了すると、改めて同じ手続きをすることが必要となります。しかし、改めて同一手続きを実施するのはかなり面倒です。  そこで、行政上の取り扱いとして自動更新方式の三六協定も有効と認められています。具体的定めかたとしては、「この協定に労使とも異議がない場合は効力を同一期間存続させる」旨定めておけばよいでしょう。そして、期間の満了時に更新につき労使いずれの側からも異議がなかった事実を証明する文書を労基署に提出すれば次期についても効力の存続を認める取り扱いとされています(昭29・6・29、基発355号)。



役員として出向した労働者、業務上の保護受ける?
関連会社の役員(取締役)として出向した管理職が業務中にケガをしました。在籍出向なので、当社の従業員としての身分も保有しています。この場合、当社の労働者として労災保険の保護を受けられるのでしょうか。(大阪・P精機)


労災保険は現実の労働や通勤に伴う災害に対して給付を行うものですから、一般的な出向の場合は、出向先の労災保険が適用されます。ところが、業務執行権のある役員は労災保険の保護を受けられませんからご質問がこのケースに当たる場合は出向先の労災保険の適用はありません。
 そこで、在籍出向の場合は、出向元に労働者としての身分があるのだから、出向元の労災保険の適用を受けることができるのではないか、との考え方が出てきますが、前述のように、労災保険は現実の労働などに伴う災害を補償するものですから、法形式上の身分が帰属するだけの出向元の労災保険も適用されません。結局、役員としてした労働者は原則として業務上の災害を被っても労災保険の保護を受けられません。
 このため、災害危険のある出向の場合は、民間の保険に加入するなどの対策が望まれます。





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