●情報BOX登録No.9612B101

   タイトル: 人事・労務問題相談室
   
労基旬報第1012号(平成8年12月5日)より


日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。


午前中に半日年休を取得し、午後出勤した労働者の時間外労働の問題
午前中に半日年休 (4時間) を取得した労働者が午後から出勤して5時間労働しました。 この労働者は年休を取得した半日を労働したものとみなし、 法定労働時間を超えた1時間については時間外労働として割増賃金を支給すべきだと主張しています。 年休 (半日) は賃金が支給されるのだから、 労働時間と扱うべきだというのがその根拠のようです。 しかし、 実際に労働したのは法定時間以下なのですから、 その考え方には納得いきかねます。 こうした場合はどのように取り扱ったらよいのでしょうか。 (東京・A住宅サービス)


時間外労働として割増賃金の支払い対象になるのは実際に労働した時間です。 年休 (年次有給休暇) の本質は労働義務の免除にありますから、 たとえ賃金が支払われてもその日 (ご質問では半日) に労働したということはできません。
 労働関係では、 所定労働時間中の労使協議時間のように、 実際には労働していない時間に賃金が支払われることがあり、 そうした時間は 「賃金時間」 と呼ばれていますが、 年休もおおまかには法で定められた賃金時間と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
 そうすると、 ご質問では午前中に4時間の賃金時間 (半日年休) がありましたが、 実際に労働したのは1日の法定労働時間に満たない5時間ですから、 割増賃金の支払い義務は生じないことになります。
 こうした考え方は、 フレックスタイム制における年休の特別の取り扱いからも、 導くことができます。
 同制度では 「標準となる1日の労働時間」 を労使協定で定めることが義務づけられており (労規則12条の3)、 年休を取得した場合には 「当該日に標準となる1日の労働時間労働したものと取り扱うこと」 と労働省により通達 (昭63・1・1、 基発1号) されていますが、 このように取り扱わないと、 年休を取得した日 (時間) だけ当該単位期間の契約労働時間に不足してしまい、 年休の取得を大きく阻害するためだと理解されています。 逆にいえば、 そうした問題が生じず、 かつ特別な法令も定められてない非フレックスタイム制の場合は、 年休(半日)を労働時間に含めない取り扱いが原則になります。
 このように解すると、 たしかに通常の勤務なら始業時間から計算して8時間を超えた労働は時間外労働として割増賃金の対象になるのと比較して労働者に不利益になると感じるむきもあるかもしれません。 しかし、 時間外手当は労働の長さ (量)に対する代償として支払われるものですから、 あながち不利益ともいえないと思われます。
 ただし、 法律解釈の原則からこういえるということですから、 半日年休を労働時間とみなし、 その場合に法定を超える時間に割増賃金を支払っても差し支えないのはもちろん、 就業規則で終業時刻以降の労働に割増賃金を支払う旨定めている場合は、 労働契約上の支払い義務を負うことになります。



労使協定締結の際、労働者代表選出において管理職の投票権行使は問題か?
無労組企業のため、 三六協定の労働者代表を投票で選ぶことになりましたが、 管理職が投票権を行使するのはおかしいとの意見が出されました。 どうなのでしょうか。 (長野・N精密)


無労組企業が三六協定などの労基法上の労使協定 (現在労基法にはそうした労使協定が10あります) を締結するためには 「労働者の過半数を代表する者」 を選挙などで選ぶ必要がありますが、 ここでの 「労働者」 には時間外労働の規制を受けない管理監督者も含まれますし、 時間外労働を禁じられている満18歳未満の者も含まれます。 さらにパートタイマーや出向者などの一般社員とは雇用形態の異なる者も含まれます。
 要するに、 その事業場で役員 (兼務役員を除く) 以外の、 労働契約の締結下にある全ての労働者が休職者も含めて 「労働者代表」 の選出母胎となります。 これは、 労働者代表の選出にその事業場の全ての労働者の意見を反映させる趣旨だとされます (昭46・1・18、 基収6206号)。
 したがって、 管理監督者に労働者代表選出の投票権があるのはもちろん、 投票権を与えないで選出した場合は適法な手続きを踏んだとはいえないことになります。
 ご質問の一部の意見は管理監督者を労働者代表に選ぶことと混同しているのではないでしょうか。 三六協定の労働側代表者に人事部長など労働時間制度の決定権者を選ぶのは適当でありません (おそらく労基署は受理しない) からその意味でなら、 ご質問の一部意見も頷けます。



単身赴任者が飛行場でケガ、通勤災害の保護受ける?
福岡から東京に転勤した労働者が単身赴任していますが、 月に一度は家族のもとに帰っています。 その労働者が先日帰省の途次飛行機のタラップで足を滑らせ骨折しました。 この場合、 通勤災害の保護を受けられますか。 (福岡・w物産)


単身赴任者が家族の住む自宅と会社 (就業の場所) をいわゆる直行直帰のかたちで往復する際の事故の通災による保護については、 従来その頻度とともに距離、 時間についても制約が課されていましたが、 現在は距離、 時間についての制約は外され、 当該往復行為に反復継続性が認められる場合は対象とする扱いがなされています。 反復継続性についてはおおむね月に1回以上の往復行為がある場合は、 認めることとされています。
 ただ、 通災である以上はその往復行為が合理的な経路および方法でなされなければならないのは当然で、 私的逸脱中の事故などは保護されません。
 ご質問の事故は飛行機のタラップで起きたこと以外詳しくはわかりませんが、 それが会社から真っ直ぐ飛行場に赴いた、 あるいは自宅から直行で会社に行くためだったなどの状況なら保護されると思われます。





労基旬報ホームページヘ






Copyright (c)(株)労働実務NET-B 1996 All Rights Reserved.