![]() |
| タイトル: | 人事・労務問題相談室 | ||
|---|---|---|---|
| 労基旬報第1010号(平成8年11月15日)より |
| 日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。 |
![]()
年休を時間単位で使用したいとの労働者の希望が増えていますが、 最小分割付与単位は半日だとのことですから応じていません。 しかし、 遅刻などに時間単位の取得が認められれば勤怠考課でのマイナスを免れられるためか、 要望がなくなることはありません。 法定の消滅時効にかかった年休を一年だけ持ち越すことを認めていますので、 その部分だけでも時間単位の取得を認めようと思うのですがどうでしょうか。 (東京・Qプリント)
年休 (年次有給休暇) の法規定上の最小分割付与単位は1労働日ですが、 昭和63年の労働省通達 (昭63・3・14、 基発150号) で、 半日単位で与えても違法扱いしないこととされました。 しかし、 法規定上の最小分割付与単位は依然1労働日ですから、 労働者からの申し出か、 就業規則に定めがある場合でなければ半日単位の取得を強制することはできません。 労働者のなんらかの了解がある場合の年休の最小分割付与単位が半日であるという意味でなら、 ご質問の理解で差し支えありません。
ところで、 そうした意味での最小分割付与単位の規制がかかるのは労基法に基づいて発生する法定年休に限られます。 労基法の基準を上回って与えられる年休の取り扱いについては法は関与せず、 労使の自治に任せられるからです。
ご質問のように2年の消滅時効にかかった年休のうち1年間持ち越しを認めた年休や最初から法定を上回って与えた年休 (たとえば、 勤続6カ月で12日など10日を上回る年休) などについては、 通達による半日の最小分割付与単位の規制も受けません。 極端にいえば、 時間単位よりも細分割して分単位で与えることも差し支えありません。
実務の取り扱いとしては、 就業規則に法定を上回る (法定外) 年休については、 時間単位で取得することができる旨定めておけばよいと考えられます。 この場合、 労働者は労働契約上の権利として法定外年休を時間単位で取得する権利を持つことになりますから、 使用者は合理的理由なく拒否できなくることに注意が必要です。 もっとも、 年休権は抽象的で目に見えるものではありませんから、 どの年休が法定年休か法定を上回る年休かを区別できませので、 実際上は労働者から保有法定外年休の範囲で指定させることが必要となると思われます。 そして、 年休年度の途中で法定外年休を消化した場合、 以後は半日以下に分割して年休を付与することは許されなくなります。
このように、 法定外年休については付与単位を細分割することは法的には使用者の任意 (就業規則に定めれば義務になることは前述) に任されますが、 労務管理上それが得策かは別個の問題です。 時間単位での取得ができる (遅刻が勤怠考課に反映されなくなる) ために遅刻、 早退などが増加することが考えられるからです。
法定外年休の時間単位付与には、 そうしたリスクの検討が必要です。
![]()
今年採用した労働者のなかに、 いわゆる茶髪、 ロンゲなどの者がいます。 改めさせたいのですが、 差し支えありませんか。 (大阪・P製菓)
労働者は労働契約の締結により合理的な服務規律に従う義務を負いますが、 使用者の一般的な支配下に入るわけではありません。 職務に支障がない範囲で労働者は服装、 髪形などを自由に決定する権利があるというのが、 一般的な考え方です。
ユニホーム (事務服) が決まっている場合の労働時間中の着用の義務づけなどは差し支えないと考えられます (就業規則の定めがある場合は黙示の受諾をしていると理解できます) が、 ご質問の茶髪、 ロンゲ (長髪) など労働時間の内外を通じて労働者と一体化している身だしなみの規制は、 人格的自由とのからみで職種 (対外的接触の有無) と関連づけて検討する必要があります。 製造現場など対外的接触のない職種ではより自由の尊重が要請され、 販売、 営業などの対外接触のある職種では規制できる範囲が広がるといえます。
この点で参考になるものに、 ハイヤー運転手の口ひげが問題になったイースタン・エアポートモータース事件判決 (昭55・12・15、 東京地裁) があります。 同判決は、 合理的な服務規律に労働者は拘束されるが、 その対象になるのは不精ひげとか異様・奇異なひげだけであるとして、 労働者を勝訴させました。 茶髪やロンゲが 「異様・奇異」 であるかは見方によりますが、 労働者が対外接触のある職種である場合は改めるように指導しても差し支えないと思われます。
![]()
労働者を中途採用しましたが、 健康保険の被保険者資格の取得届の提出を忘れていた間に病気にかかってしまいました。 使用者の責任として治療費の負担をしなければなりませんか。 (北海道・W土地開発)
使用者 (事業主) は労働者を採用した場合、 5日以内に被保険者資格取得届を提出することになっています (健保則第10条の2)。 しかし、 忙しさに紛れて届け出を忘れる例もあるようです。
この場合、 ご質問のように使用者の責任 (過失) として治療費を負担させる考え方もありうるでしょうが、 使用者が応じない場合は労働者の不利益となります。 そこで、 健康保険ではそうした場合、 被保険者証に基づいて療養の給付をすることが困難であったとして、 療養費を支給する取り扱いとしています。 ですから、 医療機関に支払った診療費は社会保険事務所に請求すれば払い戻されることになります。
労働者が支払った治療費分をとりあえず支給し、 社会保険事務所から払い戻された診療費から返還させるのが妥当な取り扱いではないでしょうか。
![]()









