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   タイトル: 人事・労務問題相談室
   
労基旬報第1007号(平成8年10月15日)より


日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。


退職金の支払い時期は?
退職金の支払い時期について、 お尋ねします。 当社は数年前に設立された会社ですが、 最近初めて退職者が出ました。 その者のいいぶんによると退職金の請求後7日以内に支払う義務があるとのことですが、 かなりまとまった額ですのでもう少し猶予期間があってもいいのではないかと思います。 就業規則を調べたところ支払い時期については定めがありませんでした。 このような場合は労働者の要求をのまなければならないのでしょうか。  (東京・E長期クレジット)


退職金は就業規則や労働慣行で支給基準が明確にされている場合は、 労基法上の賃金と取り扱われます。
 そして、 労基法第23条は 「労働者の…退職の場合において、 権利者の請求があった場合においては、 7日以内に賃金を支払い…」 と規定していますので、 この規制が退職金について及ぶかが従来から議論されてきました。 退職金は通常の賃金と異なり支払いが法律で義務づけられていず、 また、 退職事由によっては減・没収される可能性があるなど変動的要素をはらみ、 退職時点では請求権として確定しているといえないためです。
 そのため、 実務では退職後請求があってから7日を経過しても予め特定した支払い時期の到来までは支払わなくても差し支えないと取り扱われてきました (同旨、 昭・3・、 基発150号)。 また、 昭和62年の労基法改正で就業規則の規定事項として抽象的に定められていた退職手当の項目が 「支払いの時期」 を明示するように改められました。 就業規則に支払いの時期を定めておけば退職金については労基法第23条の規制対象とならないことが法律的にも明確にされたことになります。  
 しかし、 ご質問では退職金の支払い時期について定めていないとのことですから、 こうした考え方で処理することはできません。 原則的には前出規定の規制を受けると考えざるをえません。 ただし、 その保護を受けるのは請求権として確定した退職金に限られますから、 単に退職したというだけでなく、 企業秩序違反など減額事由の有無の確認を経て金額が確定した後、 請求があった場合に7日以内に支払えばよいと解されます。
 このように、 退職金については支給基準ばかりでなく、 支払い時期も就業規則に明示しておかないとトラブルが生じがちです。 明確に規定することが望まれますが、 その時期については 「退職後3カ月以内」 とするのが妥当でしょう。



定額残業手当は適法か?
タクシー乗務員の作業指示などに当たる運行管理者に時間外や深夜労働をさせることがかなりありますが、 月毎にそれら手当を計算するのが面倒です。 そこで、 固定手当としたいのですが法的に問題ありますか。 もし、 可能なら妥当な手当の算出方法についても、 ご教示ください。 (仙台・R交通)


時間外労働や深夜労働 (午後10時から午前5時まで) をさせた場合、 使用者はその時間については2割5分の割増賃金を支払わなければなりません。
 その計算方法は、 基本的賃金から家族手当などを控除して算出した割増賃金単価に残業時間を乗じ、 さらに1.25を乗じるというものです。
 ところで、 時間外や深夜の労働時間数は月によって変動するものなので、 残業手当は月毎に計算するのが原則です。 しかし、 その事務処理がかなり繁雑なため、 ご質問のように定額の残業手当で対処したいという実務のニーズはかなり強いようです。
 これについては、 法定の方法で毎月計算しなくても法定の計算方法による残業額を下回らなければ固定手当として支払っても差し支えないという考え方が確立しています。 残業手当制度の趣旨は、 要するに残業させた場合は使用者に法定の割増賃金を下回らない賃金を支払わせることにあるからです。
 ただし、 基本的賃金か残業賃金かを事後的に判断できるように就業規則 (賃金規則) で明確に区別して定めておくことが必要です。 この点が不明なために固定手当が残業見合い分といえないと判断された裁判例がかなりありますからとくに注意を要します。
 さて、 固定手当の決め方ですが、 過去1年程度の平均的な月の残業 (時間外、 深夜) 時間数を算出し、 それに割増賃金単価の1.25倍を乗ずる方法が一般的なようですし、 それで問題ありません。
 なお、 そうして算出した手当に比べてある月の実際の残業額が上回る場合は差額支給の必要があります。



休業前の昇給差額賃金、傷病手当金から控除?
傷病手当金を受給中ですが、 休業前の昇給差額 (今年の賃上げ交渉が1カ月遅れたためそ及支給されたもの) が支給されました。 これは、 傷病手当金から控除されるのでしょうか。 (北海道・O生)


ご質問の趣旨は少しわかりづらいのですが、 多分、 本来4月に行われるべき昇給の決定が労組との交渉が長引いたなどの理由で5月にズレ込んだため、 4月以降休業に至るまでの労務を提供していた期間分について昇給額がそ及支払いされたということだと思われます。 そうだとすると、 その差額支給された賃金が傷病手当金から控除されることはないと考えて差し支えありません。
 健康保険法では、 傷病手当を受給している期間中に、 その期間を計算単位とする報酬の支払いがあった場合に、 その額が標準報酬日額の6割以上なら不支給、 6割未満なら傷病手当金との差額を支給することになっています。
 ご質問の昇給差額は労務不能で休職する以前の月を対象にそ及支給されたものですから、 たとえ現実の支給が休業期間中になされても控除の対象とはならないのです。





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