●情報BOX登録No.9609B102

   タイトル: 人事・労務問題相談室
   
労基旬報第1004号(平成8年9月15日)より


日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。


就業規則の懲戒規定に定められていない懲戒処分は履行できる?
業績を著しく落としている営業部門のある課の実態を調べたところ、 課長の勤務態度がルーズなことが要因となっていることがわかりました。 勤務時間中に部下が連絡しようにもどこに行っているかわからないことがしばしばあるというのです。 放置できませんので、 一般職への降格をいい渡したところ、 本人は職務怠慢は認めましたが、 就業規則上の懲戒処分の種類として降格が定められていないことを口実にそれを受け入れません。 懲戒規定に定めていない場合は降格させることはできないのでしょうか。 (東京・S商事)


能力主義の浸透に伴って降格が実務上の問題になるケースが増加しているようです。
一般に、 降格は管理職から一般社員に地位を引き下げることを意味し、 懲戒処分の種類の一つとして就業規則に定めている企業が多いようです。 その場合、 ご質問のような管理職による職務怠慢は職場の士気に悪影響を与えることは明らかですから、 職務怠慢を理由とする降格処分には一般的には問題がありません。
ところが、 懲戒処分の一種として降格を定めていない場合にはそれが不利益を伴う処分であるため、 就業規則に定めのある他の減給などの処分はできるが、 降格は実施できないのではないかとの疑問があり、 実際にもそうした主張がなされることがあります。
懲戒処分は就業規則への明示で労働契約の内容になっている場合にのみ認められるというのが、 現在の一般的考え方だからです。
たしかに、 降格を懲戒処分として行う場合には、 そうした考え方が妥当します。 しかし、 使用者には労働者を企業組織のなかにどう位置づけ、 どのような役割を与えるかを決定する人事権があるのですから、 思想・信条や社会的身分などを理由とするものでない限り、 その権利の行使として不適切な管理職を降格することは自由になしうると解されます。
たとえば、 過度に飲酒にふけり職場ミーティングにしばしば遅刻する管理職の一般社員への降格の当否が争われたある裁判例 (星電社事件、 神戸地裁平3・3・判決) では、 要旨、 「降格は就業規則に根拠がなくても人事権の行使として裁量的判断により可能である」 と判断されています。
このように、 降格は懲戒処分としてなされるものと、 人事権の行使として実施されるものがあり、 後者は就業規則の根拠を要しないというのが一般的な考え方です。
なお、 降格に伴う職務変更の結果賃金が低下しても減給制裁の制限 (労基法第91条) には違反しません (昭・3・、 基収518号)。



代休取得拒否の労働者に賃金を支給しなくてもよいか?
土曜日と日曜日に休日出勤をさせ、 日曜日は法定の割増賃金を支払い、 土曜日出勤分については代休を取得するように命じたところ、 ある労働者がそれを拒否しています。 他の労働者については賃金を清算処理していますので、 土曜出勤分の賃金を支給しなくてもかまいませんか。 (長野・O製作所)


休日出勤をさせた後で代休を与えた場合、 代休日をノーワークノーペイの原則で処理することは違法といえませんから、 通常の賃金部分 (いわゆる1の部分) については休日出勤分の賃金と清算することは差し支えないと解されます。
ただし、 週の法定労働時間が40時間の企業では土曜日に出勤させることで週の法定時間を8時間上回りますから、 通常の賃金に上乗せさせる割増賃金部分 (いわゆる0.25部分) については清算することはできません。
結局、 ご質問のケースで代休を取得した労働者については出勤した土曜日の賃金の2割5分を支払えばよいことになります。
ところで、 問題はご質問のように代休取得を拒否した労働者の賃金の取り扱いですが、 就業規則で一定期間内の代休取得を義務づけている場合はそれが労働契約の内容となりますので、 指定した代休日の労務提供を拒否しても、 「使用者の責めに帰すべき事由」 といえず、 賃金の支払いを要しないと解することもできると思われますが、 そうでなければ労務の受領を拒むことはできず、 したがって賃金の支払い義務が生じるものと考えられます。
仮に、 代休指定日の労務の提供を拒否しても、 使用者の責めに帰すべき事由によるものとして、 少なくとも平均賃金の6割 (労基法第26条) の支払い義務は免れません。
今回は出勤した土曜日の賃金を支払い、 就業規則で代休を義務付けるのが賢明だと思われます。



整理解雇通告で期日前に退職。なぜ失業給付制限か?
社外の友人が整理解雇の通告を受けたので、 どうせならとその期日前に退職したところ、 失業給付の受給で 「自己都合退職」 と扱われ、 3カ月の給付制限を受けました。 解雇を言い渡されたのになぜでしょうか。 (福岡・I生)


雇用保険の失業給付 (基本手当) は、 原則として退職後職業安定所で受給資格の決定を受けてから7日間の待期期間を経れば支給されますが、 自己都合や懲戒解雇された場合などはこれに加えて3カ月間給付が制限されます。
ご質問の整理解雇は本来なら会社都合退職として給付制限を受けませんが、 通告後退職の効力が発生する期日の前に辞めてしまうと、 自発的退職として取り扱われざるをえません。
このように、 整理解雇の場合に期日前に退職することは雇用保険上で大きな不利益を受けるほか、 予告期間中の賃金も受けられないなど不利益が重なります。 解雇の予告は予告手当の支払いと異なり労務を提供しない限り、 その間の賃金請求権が生じないからです。
整理解雇の通告を受けた場合は、 解雇の効力が生ずる期日まではきちんと勤務することが必要です。





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