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| タイトル: | 人事・労務問題相談室 | ||
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| 労基旬報第1002号(平成8年8月25日)より |
| 日常の職場で起こった人事・労務の法律実務や取扱い上の疑問に専門家がお答えしたものです。 |
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給与担当者の手違いである労働者に月額五万円の手当を一年間にわたって過払いしていたことがわかりました。 受け取った労働者は自動車の購入資金などに当てたとのことですが、 この場合、 給与担当者の過失によるものであるため、 過払い賃金の返還を求めることはできないのでしょうか。仮に返還させることができるとしたら、 向こう一年間月々の賃金から控除してもかまいませんか。 (神奈川・Y住宅サービス)
ご質問の賃金 (月五万円の手当) は賃金制度上発生しないものですから、 不当利得 (民法第七百三条) として返還を求めることができます。 給与担当者の手違いは不当利得の返還請求権の成否と直接の関係はありません。 不当利得は当事者の過失の有無などの心理的態様にかかわりなく 「法律上の原因なく」 利益を受けた場合に成立するものだからです。 給与担当者の過失は返還請求権の成否に影響を与える要素としてではなく、 返還額を減少させる要素として考えるのが適当だと思われます。
このように、 賃金制度上の根拠なく支払った賃金 (一般に過払い賃金と呼ばれます) を労働者から返還させることは差し支えないと考えられています。 しかし、 それが相当額以上に及ぶ場合は、 将来の賃金から一方的に控除することはできないと解されます。
最高裁は、 過払い賃金を後の賃金から控除すること (調整的相殺) は必ずしも一律に禁じられているわけではないとの判断を示していますが、 その時期 (できるだけ接近していた方がよい) 金額などから見て 「労働者の経済生活の安定を害さないことが必要」 との制約を課しているからです。 月五万円を向こう一年間にわたって控除することが 「労働者の生活の安定を害さない」 といえないことは社会通念からも明らかだと思われます。
したがって、 ご質問の過払い賃金の回収は賃金・賞与などと一方的に相殺するのではなく、 労働者の同意を得て返還させるのが原則的方法となります。 この場合は、 すでに述べたように給与担当者の手違いを考慮し、 たとえば、 返還額を半分に減らして労働者から返還させることが考えられます。そして、減額した分を給与担当者に損害賠償させることも妥当性はともかく理論上は不可能ではないと考えられます (現実に発生した損害に対する賠償請求ですから 「賠償予定の禁止」に違反しません)。
しかし、 仮にかなり減額しても一度に返還させるのは無理なことが考えられます。 その場合は、 労働者の同意を得て無理のない期間で少しずつ返還させるのが適当だと思われます。
最高裁は、 近年、 使用者が一方的になす相殺と異なり、 労働者の同意を得てなす相殺は全額払いの原則に違反しないという考え方を明確にしているからです。 結局ご質問のように相当な額にのぼる過払い賃金の回収は、 一方的に将来の賃金から控除する方法によることはできず、 労働者の同意を得て賃金以外から返還させるか、 同意を得て賃金から控除 (合意相殺) する以外にないと考えられます。
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O157の菌に食品への混入を防ぐ観点から下痢の症状を示していた労働者に自宅待機を命じました。結局保菌者ではなかったのですが、この場合、休業手当の支払い義務がありますか。(静岡・Kフード)
労働者を自宅待機(休業)させた場合、それが「使用者の責めに帰すべき事由」によるときは使用者に平均賃金の六割以上の支払い義務が生じます。
食品メーカーの場合、O157の菌を商品に混入させないことは社会的責任といえますから、下痢などO157に類似した症状を示した労働者に自宅待機を命じることは「使用者の責めに帰すべき事由」に当たらないとの考え方もありえなくはありません。
しかし、臨時的に製造現場から他の職場に配転するなどの処置をとることは可能であり、そうした努力を講じずに自宅待機させた場合はその点が「使用者の責めに帰すべき事由」に該当し、休業手当の支払い義務が生じると解すべきでしょう。
労働省は、り患労働者についても、伝染病予防法に基づく就業制限義務以外への臨時的配転の努力を尽くさずに休業させた場合は休業手当の支払い義務が生じると通達(平8・8・9、基発511号)していますが、この理由は単に類似症状を呈した労働者には一層強く妥当すると思われます。
なお、平均賃金の六割を超えて支払うことはいっこうにかまわないわけですから、賃金をカットせずに全額支払うことがむしろ望ましいといえるかもしれません。実際にも、特別年休として扱い、賃金を控除しないケースが多いようです。
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盲腸の手術のために入院する労働者が最初の欠勤日から3日間について、年休を請求してきました。付与することはかまわないのですが、傷病手当受給のための「待機」の完成が遅れませんか。(大阪・E機械)
健康保険の傷病手当金は、療養のために欠勤が3日間連続して続いた後4日目から支給されますが、この期間に報酬を得たかどうかは、問われません。
要するに待機の完成は「療養のために労務に服することのできない状態が3日間連続することが必要であるとともに、これをもって足りる」(昭32・1・31、保発2の2)と解されています。したがって、療養のための欠勤の開始から3日間が年次有給休暇として処理されても、その休暇終了後の4日目から傷病手当金が支給されます。ご質問の危ぐのように待機完成時期が3日間先延ばしされ、結局労働者のメリットがなくなるということはありません。ただし、4日目以降に年休を付与すると調整の対象となり、その分の傷病手当金が不支給となります。
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